ホワイトデーだけじゃない!3月14日は数学を楽しむ日
「3月14日」と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか?「ホワイトデー」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。この日、日本のあちこちで新しいカップルがたくさん誕生するのかもしれませんね。
実は、3月14日は恋愛だけでなく、数学にとっても特別な日なのです。世界中で、数学を楽しむさまざまなイベントやアクティビティが行われます。ホワイトデー以外にどんな日として扱われているのか、その一部をご紹介しますので、みなさんもぜひ楽しんでみてください。
その1「円周率の日」
円周率を表すときに使われる数(近似値)が「3.14」であることから、3月14日を「円周率の日」として、いろいろな国でイベントが開かれます。
たとえば、アメリカやイギリスなどでは、数学が好きな人から単なる食いしん坊まで、さまざまな人が円周率の日にパイを食べて楽しみます。円周率の日は、アメリカやイギリスでは「Pi Day」と呼ばれるのですが、この「Pi」は「\(π\)」のことで、食べ物の「パイ(pie)」と同音。しかも、食べ物のパイは円形も多いことから、パイ(ピザパイを含む)を食べるようになったとか。パイやピザのスライスを3ドル14セントで売る店もあるそうです。みなさんも、πにちなんでパイやピザを食べてみてはいかがでしょうか。
また、この日に正方形のパイをプレゼントするというジョークもあるそうです。英語で「Pie are squared.」と言うと、円の面積を求める公式「\(πr\)²」を英語で言っているように聞こえるからです。こんな数学的なダジャレがわかってくれそうな人がいたら、正方形のパイを贈ってあげましょう。
さらに、NASA(アメリカ航空宇宙局)のJPL(ジェット推進研究所)は、「円周率の日」に挑める楽しいオリジナル数学問題「The Pi Day Challenge」を作成して公開しています。ポスターや解答もあるので、ぜひ挑戦してみてください。
▼JPL公式サイト「The NASA Pi Day Challenge」ページ
https://www.jpl.nasa.gov/edu/nasapidaychallenge/
もっと円周率の日を楽しみたい方は、3月14日の1時59分26秒にπにちなんだことをしてみましょう。なぜなら、その数字を並べると円周率「3.1415926……」となるから。さらに特別な感じが強まりますね。みなさんも、3月14日午後 1時59分26秒に円を描いたり、SNSで「\(π\)」と投稿したり、「\(π\)」と書いたメールを送ったりしてみてませんか?
その2「国際数学デー」
2019年、ユネスコは総会で3月14日を「国際数学デー」(International Day of Mathematics 〈IDM〉)と定めました。そのおもな目的は、数学がどこにでもあり、役に立ち、美しいものであると伝えること。さまざまな関連イベントが各地で開催されます。
毎年、その年のテーマに合わせた、数学に関わる楽しい創作チャレンジが呼びかけられます。その作品は「国際数学デー」の公式サイトで見ることができますので、ぜひご覧ください。2024年のテーマは「数学で遊ぶ」です。
▼「International Day of Mathematics」公式サイト
https://www.idm314.org/
これまでのテーマを、ご紹介しましょう。
2020年 数学がどこにでもあることを動画で表現する
2021年 世界を良くする数学をポスターで表現する
2022年 数学とのつながりを写真で表現する
2023年 すべての人に数学が関わっていることを漫画で表現する
2021年は、日本でも実用数学技能検定「数検」を実施している公益財団法人日本数学検定協会が、「『私の数学のイメージ』表現コンクール」を開催(一般社団法人 SDGsプラットフォーム共催)しました。「数学と社会のつながり」をテーマにしたポスターを募集したところ、自由な発想で数学を表現した作品が数多く集まりました。
その3「数学の日」
3月14日は、日本では「数学の日」でもあります。実は、この特別な日を定めたのは、日本数学検定協会です。数学を楽しむ文化を日本に根づかせたいと、1997年に3月14日を「数学の日」としました。
数学の日の日づけを決めるにあたって、日本全国の算数・数学ファンおよび数検受検者に「数学の日はいつがふさわしいか」とアンケートを実施したところ、さまざまな回答が挙がりました。そして、もっとも多かった3月14日を数学の日にしたとのこと。
日本数学検定協会はこれを一般社団法人日本記念日協会に申請。きちんと登録されています。日本記念日協会のウェブサイトを見ると、「円周率の3.14…にちなみ、その数字の配列から3月14日を数学の日にと日本数学検定協会が制定。数学を生涯学習として、子どもから大人まで楽しめるものに発展させるのが目的」と記されています。
「3月14日」以外では、次のような候補が挙がったそうです。
【「数学の日」の候補日】
9月9日…かけ算の九九から
11月1日…111という並びから
1月11日…111という並びから
4月5日…「数学」を中国語で読むと発音が「スーウー」で、同じ発音の「4(スー)」「5(ウー)」から
また、日本数学検定協会では過去に「数学川柳&数学俳句」という、算数・数学にちなんだ川柳や俳句を募集し受賞作品を決めるイベントを行っていて、その大賞を3月14日の「数学の日」に発表していました。
ちなみに、第1回(2012年)の大賞は次の2作品でした。どちらもステキな句ですね。
【大賞】
川柳 御破算で 願いましては 次の恋
俳句 初雪や 三角定規 ほどの坂
円周率で楽しむ「特別な日」
ここまで、3月14日が世界でどんな日として楽しまれているのかをまとめてきましたが、最後に「円周率」をもっと楽しむアイデアをご紹介します。
3月14日に婚姻届けを提出する
円周率は無理数なので、わり切れず、いつまでも数字が続きます。そこに「2人の愛が永遠に続くように」という願いをかけ、この日に婚姻届けを提出するカップルもいるそうです。
もし、いま結婚のご予定があるなら、この日に婚姻届けを提出してはいかがでしょうか。
6月28日にパイをたくさん食べる
3.14の2倍は6.28なので、アメリカでは6月28日を「Two Pi Day」と呼び、パイやピザを2倍食べたり2つ買ったりする人たちもいます。
パイやピザが好きでダイエット中でなければ、この日にたくさん食べてみるのもよいかもしれませんね。
7月22日にアルキメデスと同じ計算をする
分数の\(\tfrac {22}{7}\)が円周率の近似値であることから、7月22日を「円周率近似値の日」とする人たちもいます。3月14日や6月28日だけでなくπに関わる日として、7月22日も楽しんでみてはいかがでしょうか。
たとえば、アルキメデスが取り組んだ、\(π\)の計算をしてみるとおもしろいかもしれません。円周率を計算で導き出した最初の人物は、古代ギリシャの数学者アルキメデスだといわれています。彼は、正96角形の内側が円に接するときの周長と、外側に接するときの周長から円周を求め、円周率\(π\)が\(\tfrac {223}{71}\)より大きくて\(\tfrac {22}{7}\)より小さいとしました。小数にすると、小数第2位まで正しく求められていることがわかります。この計算方法は、当サイト内の記事「アルキメデスは円周率をどうやって求めた? 【偉人の方法を再現】」でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
いかがだったでしょうか。日本だけでなく世界にも、3月14日を愛してやまない人々がいることがわかりましたね。みなさんも、ぜひ数学を楽しむ日に特別なことをしてみてください!
〈参考〉
National Geographic「What is pi—and why is there an entire day devoted to it?」(2024年1月15日)
ABC News「What is Pi Day and why do we celebrate the holiday?」(2024年1月15日)
NBC DFW「Celebrate Pi Day With These Deals Around North Texas」(2024年1月15日)
MIND Research Institute「Pies Are Square? A Yummy Pi Day Lesson」(2024年1月15日)
7-Eleven「7-Eleven, Inc. Makes Pi Day Easy as Pie with $3.14 Whole Pizza」(2024年2月29日)
Prodigy「101 Silly Math Jokes and Puns to Make Students Laugh Like Crazy」(2024年1月15日)
Math Is Fun「Area of a Circle」(2024年1月15日)
Darcy Magazine「27 Funny Pi Day Jokes And Puns Your Fourth Grade Math Teacher Would Have Loved」(2024年1月15日)
Massachusetts Institute of Technology「Spotlight: Happy Pi Day!」(2024年1月15日)
Cable News Network「What to know about pi on Pi Day」(2024年1月15日)
ユネスコスクール「国際数学デー(3月14日)を記念して」(2024年1月15日)
INTERNATIONAL DAY OF MATHEMATICS/THE THEME FOR 2024: PLAYING WITH MATH(2024年1月15日)
@Press「3月14日はユネスコが制定した「国際数学の日」 「『私の数学のイメージ』表現コンクール」の優秀作品が決定」(2024年1月15日)
公益財団法人 日本数学検定協会 公式サイト「「数学と社会のつながり」をテーマに、国内外の生徒が自由な発想・アイデアで表現する「『私の数学のイメージ』表現コンクール」のポスターや動画の作品を募集」(2024年1月15日)
@Press「3月14日は「数学の日」! 財団法人 日本数学検定協会が第一回「数学川柳&数学俳句」大賞を発表! ~子どもから90歳以上の方まで応募総数18,924点の頂点は~」(2024年1月15日)
ニッセイ基礎研究所「円周率πが現われる世界(4)-3月14日は円周率(π)の日-」(2024年1月15日)
結婚のきもち準備室「後悔しない入籍日の決め方!おすすめの日と避けるべき日とは?」(2024年1月15日)
婚活情報メディア「3月14日はホワイトデーだけではない! 入籍にも最適な吉日だった」(2024年1月15日)
結婚指輪・婚約指輪の専門店【ヴェール】「【2024年・2025年版】入籍日のおすすめ日!語呂!吉日!凶日!」永遠に続く日(2024年2月27日)
結婚ラジオ「入籍日の決め方アイデア5選! 2024年の縁起のいい日や覚えやすい日もご紹介」(2024年1月15日)
Masterclock「TAU DAY: ARE TWO PIES BETTER THAN ONE?」(2024年1月15日)
宇津木 聡史(うつぎ さとし)
文系サイエンスライター。科学教育誌『Science Window』(国立研究開発法人科学技術振興機構発行)の副編集長などを経て、現在は単行本の執筆、出版社が発行する雑誌の記事や単行本の編集、大学や研究機関の広報物や報告書の制作などに携わっています。著書に、『似ているけれどちがう生きもの図鑑』(文一総合出版)、『おばあちゃんが認知症になっちゃった! 』(星の環会)、『教えて!科学本』(共著、洋泉社)など。