春の新生活で賢く買い物するための方法とは?失敗しないための重み付け評価
早いものでもうすぐ年度末、新しい生活が始まる季節になりますね。気分を一新するために新しいものを買うときに、1つの商品についてどちらのほうが良いかと迷うこともあるかと思います。単純に値段が安いか高いか、品質が良いか悪いかだけではなく、総合的に判断できると良いですよね。
そこで、今回は買い物の場面を例に、「重み付け評価」という方法を紹介します。新生活の買い物で失敗しないためにも、実際に問題を解きながら、賢く買い物をするためのスキルを手に入れましょう。
購入するときの評価項目を決める
新太さんと春香さんは、4月から新社会人生活が始まるのをきっかけに、それぞれ新しいテレビを購入することを検討しています。そこで、まずは2人で家電量販店にテレビを見に行くことにしました。
新太「最近のテレビは、大きさも価格もいろいろだね」
春香「私は大画面で迫力のある映像をみたいな」
新太「僕は価格にこだわりたいな。できるだけ安いほうがいいね」
春香「インターネット動画とか録画機能とか、性能もいろいろあるんだね」
新太「そうだね。価格だけじゃなく、いろんな項目で評価するべきなのかな」
春香「A社、B社、C社、D社の最新モデルからじょうずに選びたいね」
新太さんと春香さんは、テレビを購入する際に、「価格」だけではなく「サイズ」や「性能」などを踏まえて検討すべきだということに気づきました。このように何かを購入するなど意思決定をするときには、評価のための項目が複数あることがほとんどです。すべての項目を比べることはたいへんなので、そのなかでも判断に重要なものを3~5項目ほどピックアップしましょう。
新太さんと春香さんは相談の結果、テレビの購入にあたって、「価格」「サイズ」「性能」「サポート」の4つの項目で判断することに決めました。
評価項目を点数化して比べる
新太さんと春香さんは、評価項目を4つに絞ったので、次は各項目を評価することにしました。「価格」「サイズ」「性能」「サポート」について客観的な基準をつくり、どの水準にあるかで1~5の5段階評価(5が最高、1が最低)をしました。下の表は、A~D社の商品の結果をまとめたものです。
A~D社の評価表
項目 | A社 | B社 | C社 | D社 |
価格 | 4 | 3 | 1 | 5 |
サイズ | 4 | 4 | 5 | 3 |
性能 | 2 | 5 | 5 | 4 |
サポート | 5 | 4 | 4 | 2 |
合計 | 15 | 16 | 15 | 14 |
この表から点数の合計がもっとも高いのは16点のB社であるとわかります。したがってB社のテレビを買おうということになりますが、2人はまだ相談しています。
新太「4つの項目をすべて同じ5段階で評価したけど、僕はやっぱり価格にこだわりたいな」
春香「私は価格よりもサイズや性能が大事だと思うよ」
項目を設定し、基準をつくって点数化しましたが、人によって重視する項目が違いますよね。新太さんは「価格」を重視し、春香さんは「サイズ」や「性能」を重視したいようです。そんなときに用いるのが重み付け評価で、合計を求める前に点数を何倍かする方法です。重視したい項目の点数が大きくなるように決めることを、「重みを付ける」といいます。具体的に計算し直してみましょう。
「価格」と「サポート」を重視した新太さんが選ぶテレビは?
「安いテレビが欲しい。でもサポートはしっかりしてほしい!」と考えた新太さんは、項目の重要度として「価格」を4、「サイズ」を2、「性能」を1、「サポート」を3と重み付けして、下のような表を作りました。
項目 | 重要度 | A社 | B社 | C社 | D社 | ||||
5段階 | 点数 | 5段階 | 点数 | 5段階 | 点数 | 5段階 | 点数 | ||
価格 | 4 | 4 | 16 | 3 | 12 | 1 | 4 | 5 | 20 |
サイズ | 2 | 4 | 8 | 4 | 8 | 5 | 10 | 3 | 6 |
性能 | 1 | 2 | 2 | 5 | 5 | 5 | 5 | 4 | 4 |
サポート | 3 | 5 | 15 | 4 | 12 | 4 | 12 | 2 | 6 |
合計 | 15 | 41 | 16 | 37 | 15 | 31 | 14 | 36 |
重み付け評価では、項目ごとに重要度×段階を新たな点数として、その合計を求めます。たとえば、A社であれば、4×4+2×4+1×2+3×5=41(点)となります。残りの3社も同じように計算すると上の表の色のついた部分になります。その結果、A社>B社>D社>C社の順になりました。したがって、重み付け評価の結果、新太さんが選ぶテレビはA社となりました。
「サイズ」と「性能」を重視した春香さんが選ぶテレビは?
春香さんは、「大きい画面で大迫力のきれいな映像がみたい!」と考えていたので、「サイズ」と「性能」を重視する重み付けをして、下のような表を作りました。
項目 | 重要度 | A社 | B社 | C社 | D社 | ||||
5段階 | 点数 | 5段階 | 点数 | 5段階 | 点数 | 5段階 | 点数 | ||
価格 | 1 | 4 | 4 | 3 | 3 | 1 | 1 | 5 | 5 |
サイズ | 4 | 4 | 16 | 4 | 16 | 5 | 20 | 3 | 12 |
性能 | 3 | 2 | 6 | 5 | 15 | 5 | 15 | 4 | 12 |
サポート | 2 | 5 | 10 | 4 | 8 | 4 | 8 | 2 | 4 |
合計 | 15 | 36 | 16 | 42 | 15 | 44 | 14 | 33 |
新太さんのときと同じように計算をすると、C社>B社>A社>D社の順になります。したがって、重み付け評価の結果、春香さんが選ぶテレビはC社となりました。
このように重み付けをすることによって、同じ評価の商品でも点数が変わります。人によって選ぶ商品が異なるのは当然ですが、このような重み付けをすることによって、自分の理想に合う商品を論理的に考えることができますね。
重み付けをしない評価、新太さんの重み付け評価、春香さんの重み付け評価について、点数が大きい順にまとめると下のようになります。
- 重み付けをしない評価 B社>A社=C社>D社 ⇒ B社を選択
- 新太さんの重み付け評価 A社>B社>D社>C社 ⇒ A社を選択
- 春香さんの重み付け評価 C社>B社>A社>D社 ⇒ C社を選択
重み付けをすることによって、順位が変わることがわかりますね。重点の置き方によって、評価の点数が変化して、自分の考えが反映された結論が導きやすくなります。
重み付け評価の注意点
点数化をするときは、だいたいこれくらいとするのではなく、基準を明確にしておくことが大切です。主観的に評価をすると、自分の知っている商品を甘く、知らない商品を厳しく評価することもありますので、客観的に評価する見方ができるとよいですね。
また、重み付け評価の結果を変えるために、重みの付け方を変えるということをしてはいけません。何に重点を置いて評価するのかというのは、はじめに明確にしておきましょう。
単純なポイントの合計ではなく、重み付けを使うことによって、自分の理想に合う商品と出合えるかもしれません。ぜひいろいろな商品を見ながら、重み付け評価を使って、賢く買い物してみてくださいね。
古山 竜司
大阪府生まれ。九州大学大学院卒業(芸術工学)。数学検定1級(数理技能検定)、英語検定準1級、数学コーチャープロA級ライセンス取得、ビジネス数学講師。「数学・算数を通じて人々を幸せにする」を使命に大阪府高槻市にマスラボを開業。またYouTuberとしても5,000本の動画を配信し、チャンネル登録者も1万人達成。著書に「これだけ微分積分」「これだけ微分方程式」(いずれも秀和システム)など。
算数・数学塾「マスラボ」
サイトURL:http://furuyaman.com/