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知っておきたい!夏を乗り切るための「暑さ指数(WBGT)」

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全国的に猛暑が続き体調管理がたいせつです。誰でも条件次第で熱中症にかかる危険性がありますが、正しい予防方法を知り、ふだんから気をつけることで熱中症を防ぐことができます。2025年7月1日、気象庁は、2025年6月の日本の平均気温について平年より2.34℃高く、1898年の統計開始以降でもっとも高かったと発表しました。全国各地で猛烈な暑さとなるなか、夏に気をつけなければいけない「暑さ指数(WBGT)」をご紹介します。

暑さ指数(WBGT)とは

暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度))とは、熱中症を予防することを目的としてアメリカで提唱されたもので、気温、湿度、日射、ふく射熱などを考慮した指標です。気温を表す「乾球温度」、湿度の影響を取り入れた「湿球温度」、周囲の熱環境の影響を取り入れた「黒球温度」の3種類の計測値をもとに算出されます。

下のグラフは、主要都市における2008年から2021年までの夏季のデータをもとに、暑さ指数(WBGT)と熱中症による救急搬送数の関係を表したものです。暑さ指数(WBGT)が28℃を超えると、熱中症患者が急増する傾向があることがわかります。

暑さ指数と熱中症患者数の関係
環境省 「熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)について」 を加工して作成

暑さ指数(WBGT)の算出式

環境省のウェブサイトには、暑さ指数(WBGT)の算出について以下のように記載されています。

屋外での算出式

暑さ指数(WBGT)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

屋内での算出式

暑さ指数(WBGT)=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

※WBGT、湿球温度、黒球温度、乾球温度の単位は「℃」。

算出式にある黒球温度、乾球温度、湿球温度は、下のような装置で計測されます。それぞれどのような温度か見ていきましょう。

温度計測装置

①黒球温度(GT:Globe Temperature)

黒色に塗られた、薄い銅板でできた空洞の球の中心に温度計を入れて観測します。直射日光にさらされた状態での球のなかの温度を観測しており、弱風時の日なたにおける体感温度と関係があります。

②乾球温度(NDB:Natural Dry Bulb temperature)

通常の温度計を用いて、そのまま気温を観測します。

③湿球温度(NWB:Natural Wet Bulb temperature)

水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測します。温度計の表面にある水分が蒸発した際の冷却熱とつり合ったときの温度で、皮膚の汗が蒸発する際に感じる涼しさの度合いを表します。

暑さ指数(WBGT)の算出式を見ると、湿球温度が7割を占めていて、暑さ指数(WBGT)の値に大きく影響していることがわかります。そのため、今回は湿球温度について掘り下げていきましょう。

湿球温度は気温と湿度に関係していて、気温が一定の場合、湿度が低いほど湿球温度が低くなり、湿度が高いほど湿球温度が高くなることが知られています。これは、温度計の表面にある水分が蒸発すると、まわりの温度が下がるためです。

気温・湿度と湿球温度の関係

気温、湿度、湿球温度の関係について、もう少し具体的に見ていきましょう。下の表は、気温と湿度の値から計算した湿球温度の値をまとめたものです。

湿球温度の表

気温が同じでも湿度が低いと湿球温度が低いことがわかります。つまり、気温が同じでも湿度が低いと涼しく感じるということです。暑さ指数(WBGT)の算出式で湿球温度が多くを占めているのは、涼しさの度合いを重視するためであることがわかりますね。

熱中症の予防のために

東京都心における暑さ指数(WBGT)を見てみましょう。下のグラフは、1日の最高の暑さ指数(WBGT)のデータをもとに、7月の平均を過去5年分までまとめたものです(ただし、2021年から2024年までのデータは確定版、2025年のデータは実測値)。

東京都心のWBGT推移環境省「熱中症予防情報サイト 全国の暑さ指数(WBGT)」を加工して作成

このグラフから、7月の東京都心における暑さ指数(WBGT)は、熱中症患者が急増する28℃を毎年超えており、とくに2023年以降は31℃を超えるほどの水準で推移していて、熱中症リスクが高まっている傾向が読み取れます。

熱中症の予防については、日本生気象学会による「日常生活における熱中症予防指針」や日本スポーツ協会による「熱中症予防運動指針」があり、暑さ指数(WBGT)に応じて下の表のような注意事項が示されています。

熱中症予防の指針表

ここまで見てきたように、日本の夏のように蒸し暑い状況では、気温だけでは熱中症のリスクは評価できません。暑さ指数(WBGT)の算出式によって求めた結果を表に当てはめて、熱中症の予防に役立てていきましょう。

最後に、2021年から全国で運用が始まった「熱中症警戒アラート」をご紹介します。熱中症警戒アラートは、予測される暑さ指数(WBGT)が33℃以上の場合に環境省と気象庁から発表される情報で、気温のみを基準としていた高温注意情報を置き換えたものです。

また、2024年4月からは、熱中症警戒アラートの一段引き上げた「熱中症特別警戒アラート」(暑さ指数(WBGT)が35℃以上)が運用されています。各市町村では、危険な暑さを避けるための場所として、指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を指定できることになりました。クーリングシェルターは、熱中症特別警戒アラートが発表されている期間中、一般に開放されます。危険な暑さが見込まれる場合は、自宅や職場などのエアコンがある室内や、クーリングシェルターなどの涼しい環境で過ごすことが大切です。

これからの暑さは、これまでの暑さと違うという認識をもって対応することが大切です。気温だけではなく、「暑さ指数(WBGT)」にも注目して熱中症予防のための行動をとっていきましょう。


【参考文献】

/media/ひとふり編集部

ひとふり編集部

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