数学のチカラで日常をちょっと賢く、もっと楽しく

座標平面と行列の力で自分を「見える化」しよう!

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目次


日々のせわしない仕事や生活に追われ、気がつけばもう半年、1年が過ぎてしまった。本当はやりたいことがあるのに、時間が思うように使えず、やりたいこともできていない。そんな人も多いのではないでしょうか。

今回は、数学の力を使って自分の行動を数値化し、人生を効率的かつ豊かに過ごす方法について一緒に考えてみましょう。


いまの自分を「見える化」してみよう

「自分の行動を数値化する」といっても、自分の行動が「10」とか「100」とか数字に置き換わるわけではありません。また、日記のような「今日は何をした」「何を考えた」というものでもありません。自分の行動を振り返るときに、その行動がどのようなものであったかを見るということです。

私の1日の行動を例にして見ていきましょう。

まず付箋を用意します。付箋がなければノートでも構いません。今日(もしくは昨日)を振り返って1日の行動を書き出してみましょう。この際、その行動に何分くらい時間を使ったかも書き出していきましょう。ざっくりで構いません。

つぎに、その付箋を座標平面に貼っていきます。座標平面と聞くと、「x、yが出てくる関数の…」と思うかもしれませんが、実はとても便利です。

縦軸と横軸を次のようにかいて、座標平面をつくりましょう。横軸は「時間」で、右へいくほど長く、左へいくほど短くなります。縦軸は「重要度」で、上へいくほど高く、下へいくほど低くなります。

座標平面が用意できたら、先ほど作った付箋を貼っていきましょう。

真ん中の位置に、たとえば「朝食30分」の付箋を貼ります。これを目安にして、他の付箋を貼っていきます。

「重要度」とは、かんたんにいうと、それを放っておくと自身に影響が出るものの度合いです。私の場合であれば、「仕事」は毎日するものなので重要度は高く、「昼寝」などはもちろん重要度は低くなります。貼ったあとに他の行動と比べてみて、「こっちのほうが重要度は高いなぁ」「これとこれは同じくらいだなぁ」というように、かんたんに貼り直すことができるのが付箋のよいところです。

このようにして付箋を貼ることで、1日の時間をどのように使っているかを把握することができます。


それでは、それぞれの「象限」について見ていきましょう。「象限」とは、縦軸と横軸によって分けられた4つの領域のことです。右上が「第1象限」、左上が「第2象限」、左下が「第3象限」、右下が「第4象限」といいます。

第1象限(重要度が高く、時間が長い)

この領域は、重要度が高く時間も長いことから、1日の生活のなかで大半を占めているものを表します。仕事をしている方はここに仕事が入りますが、仕事の他に何か入る場合は、その行動が自分のなかで大事にしている行動ということになります。

私の場合だと、「昼食」や「動画作成」が入ります。昼食は、ビジネス関係で話をすることもあれば、家族と話す機会にもなります。動画作成は、YouTubeなどで情報発信する機会にもなるので、仕事と関係しているともいえます。

第2象限(重要度が高く、時間が短い)

ここは、重要度は高いが時間は短い領域です。重要度が高いということは、その行動をすることによって自分にメリットがあるということです。ただ、現状はその時間が短いので、ここに費やす時間を増やしていければより大きなメリットが得られるといえます。

私の場合は「WEB制作」です。ふだんからブログやSNSを活用していますが、忙しいときはなかなか取りかかれません。情報発信は重要なので、この部分の時間をもっと確保したいところです。

第3象限(重要度が低く、時間が短い)

家事であったり子どもの世話であったり、毎日のルーティンワークのなかで、時間は短いけれどもやることはたくさんあります。小さなお子さんがいる方は、とくにこの領域が多いのではないでしょうか。「塵(ちり)も積もれば…」ではないですが、この領域の行動がたくさんあると意外と時間がかかります。逆に、この領域の時間を効率的に使えるようになれば、他の部分により多くの時間が回せます。「効率的に家事をする方法がないか」などと考えてみるきっかけになるでしょう。

第4象限(重要度が低く、時間が長い)

毎日やらないといけないけれど、それほど重要ではなく時間もかかるといういちばん厄介な領域です。

この領域の行動を時短したいところですが、金銭的に余裕があるのであれば、費用をかけて代替手段を活用し、自分の時間を確保するというのも1つの案です。

私の場合であれば、家の掃除を自分でするのではなくお掃除ロボットにしてもらったり、買い出しに行くかわりに宅配サービスなどを活用して配達してもらったりする方法が考えられます。

忙しい1日でも、このように座標平面に配置して振り返ることで、自分がどのような1日を過ごしているのかを把握するだけでなく、「どの領域に時間をかけていて、どうしたら改善できるか」と考えることができますね。


未来の自分を「見える化」してみよう

時間をどのように使っているかを把握できれば、どの時間を削ることができるかが明確になります。実際にその時間を削減できたら、浮いた時間で何ができるでしょうか。好きな本を読んだり映画を観たりしますか?「せっかく時間ができたのに、ダラダラと過ごして時間を無駄にしてしまった…」なんてこともあるかもしれません。そんなときに有効なのが、次のようなマトリックス(行列)を使った方法です。  

これは、「能力」を行、「やる気」を列にした(2×2)のマトリックスです。毎日の仕事や家事でやるべきことややりたいことがありますが、これらを整理することが目的です。

このマトリックスの見方は、以下のとおりです。

A:「好き」なうえに「得意」なことで、やる気が高く能力も高い

B:「好きじゃない」けど「得意」なことで、やる気が低いが能力は高い

C:「好き」だけど「得意じゃない」ことで、やる気が高いが能力は低い

D:「好きじゃない」うえに「得意じゃない」ことで、やる気が低く能力も低い

このように、やる気と能力を観点にして自分の「やるべきこと」と「やりたいこと」をマトリックスにあてはめていきます。

私の場合は、以下のようになります。

それぞれについて、くわしく見ていきましょう。

A(やる気も能力も高い分野)

「動画作成」でYouTubeに5,000本以上の動画をあげています。他の人に比べて差別化ができ、モチベーションも高いので、この分野を仕事にできていると楽しくこなせますね。

B(やる気が低いが能力は高い分野)

「英語」で困ることはないですが、それを使って仕事で何かをやろうとは思っていません。海外旅行に行かなければ英語を使う機会がそもそもないので、1日10分から15分程度英語に触れておくということでなんとか英語力を保とうとしています。

C(やる気が高いが能力は低い分野)

私はきれい好きなので「掃除」をするのは楽しいのですが、いざ掃除をしてみると意外とたいへんです。うまく掃除できていなかったり、整理整頓をしたつもりがどこに置いたかわからなくなったりと能力は低いです。こういう場合はスキルを高めていくことになりますが、やる気はあるので積極的に学ぶことによって、スキルアップを実現することができます。

D(やる気も能力も低い分野)

「料理」を食べるのは好きですが、作るのはまったくできません。こういう場合は、かんたんな課題からスタートしていくか、そもそも向いていないのであきらめるかのどちらかです。

このように自分の「やりたいこと」と「やるべきこと」をマトリックスにあてはめてみると、それらが自分にとってどのような分野なのかが一目瞭然です。最初はAのところに何もなかったとしても、努力を続けてスキルアップしていくと、どんどんAやBが増えていきます。

未来に向かって漠然と「こうなりたい!」と思うだけでなく、なりたい自分がどのような状態であるかを知ったうえで対策を取ると、効率的にスキルアップが狙えます。


まずは実際に取り組むことが大切

漠然と毎日を送っていると、1年を振り返ったときに、この1年で何ができるようになったのだろうかと思うことがあります。家事や仕事も同じことのくり返しで、子どもたちは成長していくけれども自分は成長できているのだろうかと、不安になることもあります。子どものころは目の前に受験などの目標があって、それに向かって努力することができていましたが、大人になると期限も試験もなく、日々子育てやその日の暮らしでいっぱいになることもあると思います。

しかし、そんなときにこそ、少し時間をとって自分の行動や状態を整理してみてはいかがでしょうか。

数学の力を使ってふだんとは違った見方をすることで自分が「見える化」されると、より充実した人生になるかと思います。

「まずはやってみる!」ということが何より大切です。

この記事を読んだら、さっそく取り組んでみてくださいね。




/media/古山 竜司(ふるやま りゅうじ)

古山 竜司

大阪府生まれ。九州大学大学院卒業(芸術工学)。数学検定1級(数理技能検定)、英語検定準1級、数学コーチャープロA級ライセンス取得、ビジネス数学講師。「数学・算数を通じて人々を幸せにする」を使命に大阪府高槻市にマスラボを開業。またYouTuberとしても5,000本の動画を配信し、チャンネル登録者も1万人達成。著書に「これだけ微分積分」「これだけ微分方程式」(いずれも秀和システム)など。

算数・数学塾「マスラボ」
サイトURL:http://furuyaman.com/

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